病院の資産管理 — 手術機器を探すのに30分かかるなら

2026-08-06

#病院資産管理
#医療機器
#RTLS
#スマートホスビタル
#ORBRO
病院の資産管理 — 手術機器を探すのに30分かかるなら

病院は、車輮のついたものが最も多い建物のひとつです。移動式エコー、輸液ポンプ、患者モニタ、車いす、手術器具セット。そのほとんどが一か所に留まらず、1日のうちにいくつもの階を往復します。

病床数は正確にわかります。許可された数字であり、管理されている数字です。ところが移動式エコーがいま何階のどの病棟にあるかは、たいてい電話をかけて確かめます。

そして、それよりもっとわかっていないことがあります。その機器がいま使われているのか。

ひとつめの問いに答えられないと現場が時間を失います。二つめに答えられないと病院がお金を失います。そして二つの答えは同じデータから出てきます。

I. 病院で位置がわからないと起きる三つのこと

1. 探す時間が診療の時間を食う

機器を探し回る時間は、どの病院でも聴かれる話です。問題はこの時間がどこにも無駄として集計されないことです。探しているあいだもスタッフは動いているので、どの指標にも残りません。

工場で資材が見つからなければラインが止まり、止まれば数字が残ります。病院で機器が見つからなければ予定が後ろにずれ、ずれた予定は次を押しますが、「機器を探していた」とはどこにも記録されません。

2. 「機器が足りない」という結論が誤って出る

こちらのほうが高価な問題です。必要なときに機器がなければ、結論は一つに收束します。「足りないから買そう」。

しかし本当に足りないのかを知っている病院はまれです。不足を判定するには保有数でなく同時使用量のピークを知る必要があるのに、そのデータがありません。代わりに「必要なときなかった」という経験が積み上がり、それが購入申請になります。

実際には余裕の機器が別の病棟の廊下に何日も置かれていることがよくあります。資産が足りないのではなく資産の位置と使用状態を知らないのであり、その無知の代価が機器一台分の金額です。

3. 棚卸しと監査資料を人が作り直す

資産棚卸し、点検周期の管理、負し出し機器の回収。すでに過ぎたことをあとから文書で再構成する作業です。再構成なので時間がかかり、再構成なので違っている可能性があります。

II. なぜ病院は屋内測位がとくに難しい建物なのか

屋内測位の立場から見ると、病院は工場とは異なる種類の難しさを持ちます。精度の数字一つでは納まりません。

仕切りが多い。 工場は広い一つの空間に設備が置かれた構造が多いのに対し、病院は壁で細かく分けられます。病室、処置室、検査室、手術室。必要な解像度が「3階のどこか」ではなく「3階A病棟7号室」です。数メートルの誤差が隣の部屋を指します。そして使用状態を区域で判定するなら、この解像度が前提条件になります。

階が問題です。 病院の機器は階のあいだをエレベーターで往復します。階を誤判定すれば、それは位置情報でなく誤解になります。階の判定は平面精度とは別に検証する必要があります。

止められない。 病院は24時間稼働します。天井を開けて配線する工事枠が短く、区域を分けて段階的に進めなければなりません。病院では設置方式が導入の可能性そのものを狭めます。

電波に注意が必要です。 医療機器が密集する空間に新しい無線機器を入れることは、それ自体が検証事項です。UWBは広い帯域に非常に低い電力で信号を広げて送る方式なので、特定の周波数に集中する干渉が少ないという特徴があります。とはいえ検証を省略できるわけではなく、当該病院の機器構成で導入前に確認する手続きは別途必要です。

これらの条件から、病院ではアンカーを「広く何台」ではなく区画単位で設計します。電源と通信を一本の線に載せるPoE方式は天井作業量を減らし、工事枠が狭い場所ではこの差が想像以上に大きいです。ORBROの天井型アンカーTwinTrackerはPoE 802.3afに対応し、イーサネット一本で設置を完了します。

UWBの精度は仕様基準で±10〜30cm程度と語られますが、実際の値は区画構造とアンカー配置によって変わります。病院が問うべきなのは平均誤差が何センチであるかでなく、病室単位で区別できるか、階を取り違えないかです。

III. 「どこにあるか」から「使われているか」へ

位置を画面に出すのは半分です。もう半分は、その位置が何を意味するのかを読み取ることです。使用状態は三つの信号を重ねて判定します。

第一に、動いたか。 位置タグには加速度センサーが入っています。もともとは電池を節約するための仕掛けです。静止中は更新周期を伸ばし、動くときだけ頻繁に送る。ところがこの信号はそのまま使用状態の一次手がかりになります。3日間一度も動かなかった移動式機器は、3日間誰も使わなかった機器です。

第二に、どこにあるか。 同じ静止状態でも場所が違えば意味が違います。機器保管室に置かれているのと、処置室の中に入っているのは別の状態です。区域を図面上に定義しておけば、位置がそのまま文脈になります。

第三に、どれだけいたか。 区域の進入と退出がイベントとして記録されれば、滞留時間が自動で積み上がります。処置室に20分いたのか6時間いたのかは別の話です。

三つを重ねれば、機器の状態を使用中・待機・休止・放置に分けられます。しかもこれはある一時点のスナップショットでなく、時間にわたる分布として積み上がります。1日に何時間使われたか、平日と休日でどう違うか、どの病棟で回転が速いか。

ここで正直に言っておくべき限界があります。 位置と動きでわかるのは「使われた可能性」であって「使われた」ではありません。機器が処置室に入ったことと、患者に実際に使用されたことは別の事実です。ですからこのデータは二つの使い方が正しいです。ひとつは休止判定で、まったく動かない機器を見つけるのに誤差はほとんどありません。もうひとつは相対比較で、同種機器二十台の使用分布を比べれば絶対値の不正確さが相殺されます。使用の事実を確定させる必要がある用途なら、機器自身の電源・稼働ログと結びつける段階が別に必要です。

IV. 稼働率が変える四つの意思決定

使用データが積まれば、これまで経験で下していた判断に根拠がつきます。

追加購入をしなくてもよい根拠が生まれます。 同時使用量のピークが保有数を下回るなら、足りないのは機器でなく配置です。逆にピークがしばしば保有数に達するなら、それは購入申請に添えられる最も強い根拠になります。いずれにしても判断が勘からデータに移ります。

病棟間の再配置が可能になります。 稼働率が病棟ごとに偏るのはよくあることです。どの病棟に余裕が偏っているかが集計で出れば、移すだけですみます。買うより移すほうが圧倒的に安いです。

放置された機器が見えてきます。 長く動かない機器は休止資産か、あるべき場所にない機器です。アラートをかけておけば、紛失は棚卸しのときに見つかる欠損でなく、その週に処理する事案になります。

点検と校正を実使用量基準で回せます。 いまはたいていカレンダー基準で、多く使った機器とほとんど使わなかった機器を同じ周期で点検します。使用時間が積まれば、多く使ったものを先に見る順に変えられます。

これらすべての前提は、画面に出る番号が既存の資産台帳の番号であることです。タグ番号で表示されるシステムは現場で使われません。資産台帳とタグを1対1で結ぶのが最初の段階であり、ここが抜けると後の集計すべてが別の言葉で出てきます。

ORBRO OSではZone Managerで区域を定義し、In-out TrackingとTimelineで進入・退出と滞留履歴を扱います。「いま使える最も近い機器」を探すのは特定の機器を追跡するのとは別の機能であり、現場がより頻繁にするのは前者なのでNearby Searchとして別に扱っています。

V. 病院が導入前に決めること

技術仕様より先に決めるべき条件があります。

何にタグを付けないかを先に決めます。 患者には付けません。この記事が扱う対象は機器です。職員の位置を扱うかどうかは完全に別の問題で、目的・同意・保有期間をあらためて設計する必要があります。資産管理プロジェクトにさりげなく持ち込むのが最も悪い進め方です。稼働率データも同じ原則です。測る対象は機器の稼働率であって、人の業務量ではありません。この区別をプロジェクト初期に文書で固めておくほうがよいでしょう。

試験区域で階・室の区別を先に確認します。 一つの病棟にアンカーを掛けて病室単位の区別と階の判定を測ってみれば、全体に必要な設計が計算として出てきます。使用状態を区域で判定する以上、区域の区別ができなければ稼働率も出ません。カタログの数字でなく、当該病棟の数字が基準です。

どの機器から付けるかを決めます。 全資産に一度で付けるプロジェクトはたいてい遅れます。よくなくなりよく探すもの、そして高価なものからが順序です。稼働率データの価値もこちらから先に出ます。

無停止施工計画を設計に含めます。 設置は技術でなく日程の問題です。区域ごとに分けて進め、配線を最小化する電源・通信方式を選ぶことが工事期間を決めます。

既存システムと結びつけます。 資産台帳がすでに運用されているなら、位置と使用履歴はその中へ入らなければなりません。新しい画面をもう一つ開くより、すでに見ている画面に位置の欄が一つ増えるほうが定着します。

おわりに

病院の資産管理で難しいのは位置を測る技術ではありません。位置を病院の言葉に変えることです。座標でなく「3階A病棟」、タグ番号でなく資産番号、そして点一つでなく「この機器は先月何時間使われた」。

最後の一文がこの記事の要点です。位置測位を機器探しの道具としてだけ使えば、時間を節約するところで終わります。同じデータを稼働率として読めば、次の予算が変わります。そして後者は病院経営層にとってはるかに説得力のある言語です。

そのためには測位と画面が別々に立っていてはいけません。病室単位の区別ができなければ、どれだけよく作っても画面の稼働率が嘘を語ります。逆に座標がどれだけ正確でも監査資料として出てこなければ、現場は結局手書きに戻ります。ORBROはタグ・アンカーからエッジ測位演算、ORBRO OSの管制画面まで作るので、この二つを別々に扱う理由がありません。

始めるのは一つの病棟で十分です。機器数台とアンカー数台で上の条件を確認してみれば、全体の設計が計算として出てきます。ORBROリアルタイム位置測位の現場条件レビューと試験区域の設計は、お問い合わせいただければ一緒に進めます。