二人作業、最後まで一緒にいたかを何で確かめるか
2026-09-30
午前9時、機械室の扉の前で、作業許可書の作業者欄に名前が二つ書き込まれます。作業責任者が二人を確認してサインすると、二人作業が始まります。紙に残る記録は、ここまでです。
たとえば10時20分、一人が足りない部品を取りに、建物の反対側の資材倉庫へ向かいます。戻るまでに25分かかり、そのあいだ残った一人は制御盤の前で作業を続けます。作業許可書の名前二つは、そのままです。「一緒に入った」と「最後まで一緒にいた」は別の事実なのに、書類には同じ形で残ります。
最近ORBROに届いた位置測位のお問い合わせの中にも、二人一組で入った作業者が互いに離れたら知りたいという内容がありました。組の決め方ではなく、決めたあとの時間を問う質問です。
この記事は、法令や事業場の作業標準がすでに二人作業を定めている場合を前提にします。履行を確かめる三つの方法、サインと点呼、無線、位置の記録を同じ問いに当ててみて、位置の記録が示せることと示せないことを分けて書きます。一人で行う作業そのものの見守りは、一人作業の安全対策を扱った記事で取り上げています。
I. 二人作業の書類が残すのは編成です
二人一組を定める根拠は、作業ごとに異なります。規則が人の配置を数で定めている例もあります。高気圧作業安全衛生規則第36条は、空気圧縮機などで送気して行う潜水業務について、潜水業務従事者と連絡するための連絡員を、潜水業務従事者二人以下ごとに一人置くよう定めています。事業場がリスクアセスメントの結果や作業標準で二人一組を定めた作業もあります。
根拠がどちらであれ、作業の前に書類として残るのは、誰と誰が一組か、つまり編成です。ところが現場の仕事は時間の上で起きます。二時間の作業で一人が25分席を外しても、編成の記録は一文字も変わりません。
だから確かめる方法を選ぶときに投げかける問いは、「誰が一組だったか」ではありません。「一人だけが残った時間はあったか、あったならいつから何分だったか」です。
II. サインと点呼、無線、位置の記録の比較
三つの方法を同じ問いに当ててみると、違いが見えてきます。
| 区分 | サインと点呼 | 無線での交信 | 位置の記録 |
|---|---|---|---|
| 残る記録 | 作業許可書、開始と終了のサイン | 交信の記録、録音機器があれば音声 | 区域ごとの人数、人ごとの区域の履歴 |
| 確かめられる時点 | 作業の開始と終了 | 交信する瞬間 | タグを着用している作業時間の全体 |
| 分かること | 組の編成、二人の入場と退場 | 応答があったという事実、言葉で伝えた状態 | 同じ区域に二人がいたか、一人だけ残った時刻と長さ |
| 分からないこと | 開始と終了のあいだの時間 | 交信と交信のあいだ、応答した人の位置 | 互いに見える距離だったか、実際に一緒に作業したか |
| かかる手間 | サインと人数の確認 | 交信と記録の作成 | タグの支給と区域の設計 |
表で分かれる行は「確かめられる時点」です。サインは二回、無線は交信の間隔ごとに確かめ、位置の記録はそのあいだを埋めます。逆に、無線にしかできないこともあります。「大丈夫ですか」と尋ね、声で答えを聞くことです。位置の記録は居場所を残すだけで、人の状態は尋ねません。
ですから、三つは互いの代わりにはなりません。サインは組を確定し、無線は状態を尋ね、位置の記録はそのあいだの時間を受け持ちます。サインと無線だけを使っている現場なら、空いている欄は三つめです。
III. 位置の記録が示せることと示せないこと
位置の記録で二人一組を見るには、二つのことが先にそろっている必要があります。二人がともに社員証型タグを着け、作業範囲が図面の上で一つの区域として描かれていることです。区域が作業範囲と同じくらい小さいとき、「同じ区域にいる」が「一緒にいる」に近づきます。機械室全体を一つの区域にすれば、一人が反対側の端に行っていても、記録は二人です。
この条件がそろえば、記録は三つのことを示します。作業区域に二人が一緒にいたか、一人だけ残った時刻とその長さ、席を外した人がそのあいだどの区域にいたかです。冒頭の25分は、「10時20分から1人、離れた人は資材倉庫」という一行になります。
示せないことも、はっきりしています。同じ区域の中で互いに見える距離だったかは分かりません。区域の中に設備や仕切りがあれば、同じ区域にいても互いを見ることはできません。実際に一緒に作業したかも分かりません。そして記録は人ではなく、タグを追います。タグを外して作業台に置いたまま出ていけば、記録は作業台に残ります。
ここで反論が出ます。同じ区域に二人がいたという記録が、そのまま一緒に作業したという意味になるのか、というものです。なりません。その代わり、逆の方向でははっきりしています。二人がタグを着けていて区域がアンカーで覆われていたなら、人数が25分間1だったという記録は、その25分間、二人が同じ区域にいなかったという意味です。位置の記録は「一緒だった」を証明するときではなく、「離れていた時間」を見つけ出すときに本領を発揮します。
IV. ORBRO OSで区域の人数が1人になったら通知を受ける
記録を後から見るだけでは、離れていた25分間、誰も気づきません。ORBRO OSでは、その瞬間を条件としてかけることができます。
構成は四つのステップです。Zone Managerで作業範囲を区域として描き、二人のタグを作業者のカテゴリにまとめます。Zone Countingでその区域とカテゴリを指定すると、区域の現在人数が集計されます。最後に、設定の条件管理でZoneデータの条件を追加し、監視対象をそのZone Countingにして「1と同じ」を選びます。比較演算には、同じ、同じでない、以上、以下、超過、未満の六つがあります。「1以下」や「2未満」は二人とも出ていった0人の状態でも満たされるので、一人だけが残った状態を指す式は「1と同じ」です。
条件には、緊急、警告、注意、関心、正常の五つの等級のうち一つを付け、保存すると通知設定に同じ名前の通知項目ができます。通知の文面に区域の名前を入れられるので、区域には「3番設備点検区域」のように見て分かる名前を付けておきます。区域に組の外の作業者が出入りするなら数字が混ざるので、その組の二人だけを入れたカテゴリを別に作って集計します。
設計で解くべき点が一つあります。二人が数歩の差で入ったり出たりすると、その数秒のあいだも人数は1です。ORBRO OSは条件がいったん解除されて再び満たされると新しい通知を作るので、作業の開始と終了のころにも通知が出ることがあります。そこでこの条件は、SOPの基準条件としてつないでおくほうが適しています。最初のステップを選択式にして「作業の開始または終了中」「一人の離脱を確認」「無線で状態を確認」のどれかを選ばせ、カメラ確認のステップにはその区域のカメラを指定しておきます。そうすれば、離れた時間ごとに誰がいつ確認を終えたかが、SOPの記録に残ります。手順を画面に移すやり方は、ORBRO OSのSOPを扱った記事にまとめています。
作業が終わったあとは、Timelineで二人のタグを照会します。どの時間にどの区域にいたかが時間軸の上に二本並び、Excelでダウンロードして区域ごとの滞在時間を整理できます。
V. 二人作業に位置の記録を取り入れる前に確認すること
- 二人作業の一覧と場所。 作業ごとにどの空間で行われるかを書けば、描くべき区域の数が出てきます。
- 区域の大きさと測位方式。 区域は設備一台の前のように作業範囲と同じくらい狭くとり、壁や大型設備で分かれた空間は区域も分けます。区域が狭いほど測位が細かくなければならないので、この構成はORBROのUWB位置測位の社員証型タグとアンカーを前提にします。
- 信号が遮られる場所。 作業位置が大型の金属設備のあいだのように信号が遮られる場所なら、アンカーをその場所に合わせて配置する必要があります。アンカーの位置は、設備が稼働している状態で実測して決めます。
- タグの支給と着用。 協力会社の人員を含め、組に入るすべての人にタグを支給し、作業許可書の名前の横にタグ番号を一緒に書きます。何をどんな目的で残すのかは、作業者に先に説明します。
- 通知を受ける人と次の行動。 SOPの担当グループを決め、SMSで受ける必要がある人は携帯電話番号を登録しておきます。SOPのSMS送信は、携帯電話番号が登録されたユーザーにしか届きません。
おわりに
作業許可書の名前二つは、作業が始まるときの事実です。名前の横にタグ番号が書かれ、二人の区域の履歴が二本の線で添えられると、書類は作業が終わるまでの事実を持つようになります。二本の線がずれたところがなければ、記録は静かです。ずれた25分があったなら、その25分がいつで、誰がいつ確かめたかが一緒に残ります。
ORBROは社員証型タグとアンカーのTwinTracker、管制ソフトウェアORBRO OS、カメラAIのAI Event Managerを自社で作っています。そのため、位置の記録が空けておく場面を同じ図面上の映像で埋める構成まで、一つの会社の中で設計できます。二人作業として決まっている作業と場所を整理してお問い合わせいただければ、区域をどこまで狭めるかと、通知を誰が受けるかから、一緒に決めます。