介護施設の徘徊検知、扉を施錠せずに守る方法
2026-08-13
介護施設やデイサービスで最も恐ろしい報告は一文です。利用者さんが見当たらない。
そのあとに起きることはどの施設でも似ています。職員が散って食堂とプログラム室とトイレを見て回り、珄関と駐車場を確認し、それでも出てこなければ防犯カメラを巻き戻し始めます。その間も残りの利用者を見なければならず、人手は半分になります。
多くは数分で見つかります。問題はその数分がある日には数十分になることであり、そのときにはすでに施設の外だということです。
徘徊は事故ではなく症状です。認知症を伴う方にとって歩こうとする意志は自然なものであり、歩くこと自体は健康にもよい。だからこの問題を「出られないようにする方法」で解こうとすると、かえって壊れます。
I. 扉を施錠するのは答えではない
一番早い解法は物理的に塞ぐことのように見えます。珄関を施錠し、エレベーターを制限し、階段室を施錠する。
しかしこの方法は二つを同時に犠牲にします。一つは避難動線です。火災や停電のとき、施錠された扉は居住者を閉じ込める扉になります。身体の不自由な方が多い施設ほどこのリスクは大きくなります。もう一つは生活の範囲です。安全のために扉を一つずつ施錠していくと、利用者が行ける空間がどんどん狭くなります。庭があっても出られず、散歩がなくなり、不安と徘徊はもっとひどくなります。
反対の方向があります。塞ぐ代わりに把握することです。いまどの区域にいて、どの線を越え、越えたならいつ越えたのかを施設が把握していれば、扉を施錠せずに対応できます。安全と自由を引き換えにする代わりに両方を守る設計です。
II. 区域はケアプランの翻訳である
位置ベースの徘徊検知は、おおむね三種類の線で設計されます。
一つ目の線は施設の外です。 珄関、裏口、駐車場、エレベーター前。この線を越えたという信号は他のどの通知よりも優先します。通常は即時通知にします。
二つ目の線は施設内の危険区域です。 厨房、ランドリー、機械室、薬品保管庩、階段室。ここでは「出た」ではなく「入った」が通知条件になります。職員が同行していたかどうかまで区別すれば、不要な通知が大きく減ります。
三つ目の線は個人別の許容範囲です。 これが核心です。すべての利用者に同じ規則を適用するとシステムは必ず失敗します。ある方は庭まで一人で行っても問題なく、ある方は階を出れば確認が必要で、ある方は夜間だけ範囲を狭める必要があります。ケアプランにすでに書かれている内容を区域と時間帯の規則に移す作業であり、この翻訳がうまくいくとシステムは静かになります。
区域を分ける作業は技術より運営に近いものです。ORBROの統合管制プラットフォームORBRO OSは施設図面の上に区域を描き、区域ごとに条件と動作をひもづける構造なので、ケア方針が変われば画面で区域と規則を直せば済みます。施設の構造を工事し直す話ではありません。
III. 通知が鳴ったあとに何が起きるか
システムが失敗する地点は検知性能ではなく検知の後です。
まず通知がどこに行くかを決めます。看護室のモニターだけが鳴る構造なら、その時間に看護室を離れていた職員は気づきません。夜間に職員が一二名の施設なら携帯に行く必要があり、だれの携帯に行くかを勤務シフトに応じて変えられなければなりません。
さらに重要なのは誤報の管理です。一日に通知が三十回鳴れば、職員はそれを消すか無視します。そうなるとシステムはあってもなくても同じになります。通知を減らす方法は感度を下げることではなく条件を組み合わせることです。珄関区域に入っただけでは鳴らず、滞在時間が一定を超えるか外に出たとき、あるいはその時間帯に同行する職員タグが同じ区域にないときだけ鳴るようにする形です。
探す時間も短くなります。最後に確認された区域と移動方向が一緒に出れば、職員が建物を分担して回る代わりに一か所に向かえます。この差がその日の結果を変えます。
IV. 着用を維持する問題
この種のシステムは機器を身につけていなければ動きません。そして利用者はしばしばそれを外します。
まず形を選びます。リストバンドは軸が軽い代わりに外しやすく、首掛け型は維持しやすい代わりに横になると鄧ります。靴や歩行器、車いすに付ける方法は人を触らない代わりに、その器具を置いて動くと見失います。正解は施設ごとに違い、一種類に統一せず利用者ごとに使い分けることが多いです。
次に運用です。充電周期が一日ならそのシステムは長くもちません。夜に外した機器を朝に付け直す手順が誰の日課に入っているかも先に決めておきます。防水は思ったより重要で、入浴や洗面の場面で機器が死ぬことが実際に起きます。
加速度センサーが入っていればもう一つ可能になります。機器が長い間まったく動かず一か所にあれば、未着用を推定できます。外して置いた機器をその人と見違えて「安全」と表示するのがこのシステムの最も危険な失敗の形なので、未着用を別途知らせてくれるかを導入前に確認しておく必要があります。
V. 記録が残る理由
徘徊検知を検討するとリアルタイム通知にばかり目が行きがちですが、実際の運用で最も長く価値を出すのは記録のほうです。
ただ誰がどこにいたかが残るだけではありません。ある利用者がこの一か月で夜に歩き回ることが増えたなら、それは状態変化のサインであり得、ケアプランや受診を見直す根拠になります。転倒があったときに直前の動線を再生できれば、どこで何があったのかをご家族に説明できます。説明できることとできないことは、信頼において全く別の場所にあります。
ここではっきりさせておくことがあります。このシステムが見ているのは位置であって映像ではありません。居室や廊下のような共用区域では転倒検知などの映像機能を補助として使うこともありますが、生活空間までカメラを入れる設計はたいてい現場が先に拒否します。そして測定対象は職員の勤務態度ではありません。職員タグを使う理由は同行の有無を判定して不要な通知を減らすためです。この線を導入初期に明確にしておかないと、現場が先に背を向けます。
導入を検討するなら確認する五つ
- 施設外への離脱を何秒で知らせるか。 そしてその通知が誰のどの機器に行くか。
- 利用者ごとに違う規則を与えられるか。 一括規則しかできない製品は誤報でそのうち消されます。
- 時間帯別の規則ができるか。 昼と夜の許容範囲は違って当然です。
- 未着用を区別してくれるか。 外して置いた機器を人として数えるシステムは、安全だと嘘をつきます。
- 記録をどう取り出すか。 保管期間、照会方法、ご家族への説明に使える形か。
おわりに
徘徊検知を監視装置として考えると、導入はほぼ必ず抵抗にぶつかります。しかし実際にこのシステムが作る変化は反対側に近い。どこにいるかが分かれば、施設は扉をもっと開けておけます。庭まで出てもよくなり、散歩をプログラムに戻せます。
安全と自由は普通反比例で語られますが、位置が分かった瞬間にその交換条件は緩みます。施錠せずに守れるからです。
ORBROは着用型の位置測位タグから現場に置くエッジサーバー、そして図面の上で区域と通知を設計する管制プラットフォームORBRO OSまでを自社で作っています。施設規模と階構成、今徘徊をどう確認しているかをお知らせいただくだけで検討を始められます。
参考: 入居者・利用者の位置情報を扱うシステムは、施設の種別や運営方法によって準備すべき手続きが異なる場合があり、ご家族への案内・同意の手続きは所管機関との確認が必要です。