物流センターの火災で消防が最初に聞く数字

2026-08-12

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物流センターの火災で消防が最初に聞く数字

7月、首都圏の大型物流センターで大きな火災がありました。完全鎮火まで109時間かかり、消防は延べ800人台の人員と200台を超える設備を投入しました。建物の中にいた121人は自力で避難しました。

人的被害がなかったことが、この件で最も重要な事実です。そしてその事実の裏に問いが一つ残ります。火が出たその瞬間、建物の中に正確に何人いたのかを即座に答えられる現場がどれだけあるでしょうか。

消防の指揮が現場に立って最初に確認する情報が在室人員です。進入するか防御するか、人命検索に何人を割くか、どの階から洗うかがこの数字で分かれます。ところが大型物流センターでこの数字を出すのは思ったより難しい。延べ面積が広く階も複数あり、常時人員に日雇いや委託、ドライバーが混ざり、交代時間帯には二つの班が重なります。

名簿はどこにでもあります。位置はどこにもありません。非常時にこの二つの差がどれほど大きいかがこの記事の主題です。

I. 入退室記録は入った人しか分からない

ほとんどの現場に入退室管理システムがあります。だから今日何人入ったかは分かります。問題は出た人です。

入退室ゲートは進入時刻の記録には強く、退出時刻には弱い。扉が一度開く間に複数人が通り、貨物出入口や非常階段から出る人は記録に残らず、退勤時にタグを返却しない人もいます。この誤差は平常時には何の問題も起こしません。非常時だけ問題になります。

二つ目の方法は集合場所での点呼です。警報が鳴ったら指定場所に集まって人数を数えます。確実ですが遅く、決定的なのは来られなかった人がどこにいるかを教えてくれないことです。広い自動化センターで階と区域が分かれていると、名簿から欠けた一人を探す作業がそのまま捐索に変わります。捐索は時間がかかり、その間に進入した隊員も危険にさらされます。

だから必要なのはより正確な名簿ではありません。別の種類の情報です。

II. 必要なのは名簿でなく図面の上の数字

位置ベースでこの問題を解くと情報の形が変わります。

作業者が着用したタグの位置を区域単位で集計すれば区域別の在室人員がリアルタイムで出ます。3階A区域12人、地下1階の自動化設備区域2人といった形です。警報が発令された瞬間の値をスナップショットで押さえておけば、避難が進むにつれてこの数字が減ります。減らずに残る数字が未避難人員であり、その数字には位置が付いています。

さらに一段階入ると個人単位になります。最後に確認された座標、移動方向、最近通った区域。遡る機能で数分前の動線を再生すれば「この人は3階のラック区域から階段方向に移動中だった」という一文ができます。捐索範囲が建物全体から一つの区域に縮まります。

対応手順も自動で回らなければなりません。警報条件が成立したら、区域別の案内放送、担当者呼び出し、避難誘導、管理者への通知が決められた順番で実行され、その履歴が自動で残る構造です。人がマニュアルを探して読む時間に、手順のほうが先に始まらなければなりません。

最後に、この情報は外に渡せる形でなければなりません。管制画面を一緒に見る方法でも、区域別人員と未避難者リストを即座に出力する方法でも、到着した消防指揮部に手渡せて初めて価値が生まれます。自社の画面の中だけで正確な数字は、その瞬間何も変えません。

ORBROの統合管制プラットフォームORBRO OSは、現場図面の上に区域を描くところから始まります。区域を描けばその区域の在室人員と入退室履歴が集計され、警告条件と対応手順を区域にひもづけられます。非常避難はこの構造の特別な使い方の一つにすぎず、平常時は同じデータが動線分析と入退室管理に使われます。非常用にだけ存在するシステムはいざ非常時に動かないという点で、こちらのほうが現実的です。

III. 火が出るとサーバーと回線も危ない

非常対応システムを検討するときに最もよく抜け落ちる項目がこれです。火災は人だけを脅かしません。電源と通信も一緒に切ります。

位置演算とイベント判定を外部クラウドで処理する構造なら、センターの回線が切れるか電源が落ちた瞬間に画面も一緒に死にます。まさにその数字が最も必要な時点です。

だから判断は現場の中で終わるほうが安全です。ORBROは現場に設置するオンプレミスのエッジサーバーORBRO Edge Proで位置演算とイベント判定を行う構成に対応しています。外部網が切れても現場管制は維持され、映像を外に出したくない発注者の条件も同時に満たされます。

設計段階で一緒に決めるべきことがもう一つあります。無停電電源に何をつなぐかです。管制サーバーと主要区域のアンカーの一部を非常電源系統に含めておけば、停電後も最低限人員集計は生きています。これは製品仕様ではなく現場設計の問題で、導入検討時に必ず押さえるべき項目です。

IV. ロボットが入った倉庫で変わったこと

自動化が進むにつれて物流センターのリスク構造も変わりました。

物流ロボット数百台が使うリチウム電池が一つの階に集まると、電気自動車数十台分に相当する容量になるという指摘が最近の報道で出ています。政府も関係機関と民間専門家でタスクフォースを構成し、自動化物流施設の安全管理基準を検討しています。海外の大型物流事業者が火災検知、ロボット制御、電池充電管理、初期消火を一つにまとめて運用する方向も併せて伝えられています。

ここで目を引くのは検知と制御と対応が一体として扱われている点です。検知器を増やすだけでは足りないという判断が敷かれています。

位置データがこの構造で担う役割は明確です。自動化設備区域は普段人が常騐しない空間です。だからその区域に人が入っているという事実自体が情報になります。たいていは整備か障害対応中ということであり、非常時に最初に確認すべき位置でもあります。電池の充電・保管区域の進入履歴と滞留時間が記録に残っていれば、事後調査でも価値があります。

映像側は別の役割を担います。ORBROの映像イベント検知製品AI Event Managerは、煙・炎、転倒、危険区域進入といった事象を映像から捉えます。このイベントが同じ図面の同じ座標に表示されれば「3階自動化区域で煙イベント、その区域に2名」という一文ができます。カメラ画面と人員名簿をそれぞれ別のモニターで照合するのとは速さが違います。

V. 導入を検討するならこの五つを確認

  1. 着用率と回収率。 朝配って夕方回収する方式なら、実際のカバレッジは回収率が決めます。タグ100個のうち毎日70個しか戻らない現場の在室人員は30%が空いています。社員証形式で常時着用させられるかから見ます。
  2. 警報の瞬間に何が何秒で出るか。 区域別人員、未避難者リスト、最終位置。そしてそれが画面なのか出力物なのか。消防に手渡す形まで先に決めておきます。
  3. 通信と電源が切れたときに何が残るか。 位置演算が現場で行われるか、管制サーバーとアンカーが非常電源系統に入るか。
  4. 協力会社・日雇い人員まで含まれるか。 常時人員しか捉えないシステムは交代・繁忙期に最も大きく外れます。ゲストタグの発行と回収を誰がどうやるかが実質的な関門です。
  5. 記録がどんな形で残るか。 事後にその時点の区域別人員と動線を再生できるか、報告書として出力できるか。原因規明と再発防止はこの記録から始まります。

おわりに

火災は予測する対象ではなく備える対象です。そして備えの最小単位は設備リストでなく数字一つです。いまこの建物の中に何人いるのか。

この数字を平常時に常に把握している現場は、非常時に別途の手順が必要ありません。すでに画面に出ているからです。逆に平常時に分からない現場は非常時にも分かりません。警報音がその事実を変えてはくれません。

ORBROは作業者・資産の位置測位タグから現場に置くエッジサーバー、そしてこのデータを一つの図面に集める管制プラットフォームORBRO OSまでを自社で作っています。物流センター・倉庫環境での構成が気になる方はお問い合わせください。現場規模と階構成、いま人員をどう把握しているかをお知らせいただくだけで検討を始められます。