車が見える前に、人が先にわかる — AIが守る交差点の歩行者安全
2026-07-16
交通事故死者数は長年減り続けてきました。しかし歩行者、とりわけ高齢の歩行者の事故は、依然として大きな課題です。日本では交通事故死者に占める歩行者の割合が高く、その多くを高齢者が占めます(警察庁)。生活道路(住宅街の細い道)の事故対策やゾーン30の整備が進められてきたのも、そのためです。
この仕組みが作られ、実証された韓国は示唆に富む例です。韓国はスクールゾーン事故を重く罰する「ミンシク法」や、右折前の一時停止義務化など、世界でも有数の厳しい歩行者保護制度を導入しました。それでも2025年、右折事故の死者は過去最多を記録しています(韓国警察庁)。理由は単純です。制度は運転者に「止まれ」と求めますが、角の向こうの歩行者を運転者に見えるようにはできません。本稿では、AIが交差点の死角を先に読み、運転者と歩行者の双方に同時に警告する仕組みを扱います。
I. 問題は死角 — 互いに見えない
右折の角、狭い生活道路、スクールゾーンに共通するのは、建物・塀・路上駐車車両に視界が遮られ、運転者と歩行者が互いに直前まで見えないことです。既存の信号や標識は「すでに見えている」状況を前提に働きます。本当に危険な瞬間は、まだ互いに見えていない短い区間なのに、そこには何の情報もありません。この空白を埋めるには、角の両側を先に見て、二人が出会う前に知らせる装置が必要です。
II. AIが先に見る — 1秒以内の4ステップ
AI交差点安全システムは、検知から警告までを人の介入なしに1秒以内で終えます。
- 物体認識 — AIカメラが人・車両はもちろん自転車・キックボードまで4種類に区別して追跡します。
- 衝突リスク予測 — 各対象の進行方向と速度から衝突までの残り時間を計算し、閾値を超えたときだけ危険と判定します。おかげで不要な誤報が減ります。
- 双方向同時警告 — 運転者にはLED電光板で、歩行者には路面に警告画像を投影するロゴジェクターと音声スピーカーで、片方ではなく両方に同時に知らせます。
- データ記録・送信 — すべてのイベントをデータとして蓄積し、自治体・警察・消防とリアルタイムで共有します。
核心は3番目、双方向です。多くの警告システムが運転者か歩行者の一方だけに知らせるのに対し、この方式は両方に同時に知らせ、互いの存在を先に認識させます。
III. 一台が八つのリスクを同時に見る
カメラ一台が道路上の八つのリスクを同時に検知します — 右折死角、生活道路からの飛び出し、スクールゾーンの突発、速度超過での接近、夜間・悪天候、無理な横断、自転車・キックボード、群集歩行です。子どもを別の物体として学習し、スクールゾーンでの突然の横断を早く捉えます。自転車や電動キックボードといったパーソナルモビリティは別クラスに区別して途切れなく追跡します。夜間・雨・逆光のように視界の悪い環境でも、低照度を学習したAIが映像だけで安定して認識します。
IV. 判断を現場で完結させる
このシステムは映像をクラウドに送らず現場で直接分析します。現場のAIコンピュータ「ORBRO Edge Pro」が50TOPSの演算性能でカメラを最大4台まで同時に処理し、別のサーバーやクラウドなしに単独で動作します。だから通信が切れても現場の機器が自ら判断し、警告はそのまま続きます。個人を識別できる映像は現場だけで処理し、外部へは統計・イベントデータのみが出るため、個人情報保護の面でも有利です。既設のCCTVはメーカーを問わずそのまま連動し、道路を掘る掘削工事なしに既存構造物へ取り付けるため、一つの交差点で通常2時間ほどで設置が終わります。IP66等級の全天候型筐体が機器を守り、酷寒・酷暑・粉塵の中でも安定して動きます。ハードウェアから現場のエッジコンピュータ、その上の管制ソフトウェアまでを一つの手で設計するオブロの方式が、「データを現場の外に出さない」という要求を最初から構造として受け入れます。
V. 検証された技術か
新しい安全技術ほど「実際に効果があるのか」が最も重要な問いです。このシステムは2018年から韓国全国の30あまりの自治体・機関とともに約180か所に構築・運用され、オブロの運用データ上、運用箇所では歩行者の交通事故が報告されていません。技術成熟度は実証最高段階のTRL 9に達し、韓国の道路付属物として認定されています。検証の根拠は三つ — 数年にわたる現場運用、公認された技術成熟度、そして公共機関への導入実績です。
VI. おわりに
制度は基準を定めます。しかしそれを守れるようにするには、まず危険が見えなければなりません。AI交差点安全システムは、人が出会う前に死角の危険を読み、運転者と歩行者の双方に同時に知らせます。都市が国連の「2030年までに交通事故死を半減」という目標に近づくための、現実的な手段の一つです。オブロは機器の供給から管制までを一つの統合システムとして担い、事故の多い場所から現場診断で始められます。御社の都市や現場に合った構成を、一緒に描くことができます。

