固定資産の棚卸、台帳全体ではなく未検知リストから探す方法
2026-10-01
12月中旬、固定資産の棚卸を担当する人の机に、印刷した資産リストが置かれます。資産番号と品名、台帳上の設置場所が一行ずつ書かれた分厚い束です。担当者はこのリストとバーコードスキャナーを持って各階を回り、資産に貼られた固定資産ラベルを一枚ずつ読み取っていきます。
ほとんどの行は、すぐに消えていきます。モニターやプロジェクター、実験室の計測器は台帳に書かれた場所にあり、スキャナーが鳴れば次の行へ進みます。固定資産の棚卸を終わらせてくれないのは、リストの最後に残る数行です。席にないノートパソコン、別の階の倉庫へ移った測定機器、貸し出したまま戻ってこないカメラのようなものです。
この場面が年末に集まるのには、制度上の理由もあります。地方税法第383条は、固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者に、毎年1月1日現在の償却資産について、その所在、種類、数量、取得時期、取得価額などを1月31日までに所在地の市町村長へ申告しなければならないと定めています。12月決算の企業であれば、期末の資産と在庫を確かめる作業もこの時期に重なります。
資産に位置タグが付いていれば、棚卸の当日に持って出るリストから変わります。タグがすでに確かめた資産を除けば、人が探しに行くべきものは「未検知リスト」と、タグでは分からない項目だけです。残る問題は、そのリストの作り方と減らしていく順序です。
I. 固定資産の棚卸の前に、台帳を四つの束に分ける
資産にBLEタグを付けているなら、固定資産の棚卸の準備は、管制ソフトウェアORBRO OSのNearby Searchから始まります。日付を選ぶと、登録されたタグ、検知されたタグ、未検知のタグの数と受信率が出てきます。受信率は、登録されたタグのうち、その日受信機に捉えられたタグの割合です。タグごとにどの受信機(TwinTracker)の近くで捉えられたかも表示されますが、これはORBROのBLE位置測位が、タグに最も近い受信機を基準に資産の分布を見るからです。受信機ごとに設置場所の情報が付いていて、日付ごとの結果はExcelでダウンロードできます。
この結果を台帳と突き合わせると、資産は四つの束に分かれます。
- 確認できた資産: タグが捉えられ、位置も台帳と同じです。探しに行く必要はありません。
- 位置が違う資産: タグは捉えられたものの、台帳と違う区域にあります。台帳を直すか、資産を戻すかを決めます。
- 未検知の資産: タグは登録されているのに、捉えられていません。棚卸の当日、最初に探しに行くリストです。
- タグのない資産: これまでどおり、ラベルを読み取るか数量を数えます。
一日分だけを見るわけではありません。棚卸の前の一、二週間の日付ごとの結果をめくっていくと、ずっと抜けているタグと、ときどき抜けるタグが分かれます。最近また捉えられたタグは資産が構内にあるという意味なので、未検知リストのいちばん上には、ずっと抜けているタグを置きます。
II. タグで終わる確認、人がする確認
一つめの束にも、人が見るべきことは残ります。タグが教えてくれるのは、そのタグがその区域で捉えられたという事実までです。モニターの画面が割れていないか、計測器の付属品が欠けていないかは、人が見る必要があります。
| 確認項目 | タグで終わるか | 人がすること |
|---|---|---|
| 構内にあるか | 検知されたタグはここで終わる | 未検知の資産だけを探しに行く |
| どの区域にあるか | 最も近い受信機と区域の単位まで | 棚や引き出しのような細かい位置 |
| 金属キャビネット、引き出しの中 | 信号が弱まり、未検知として残ることがある | 保管場所を記しておき、扉を開けて確認 |
| タグを付けられない資産 | 該当なし | ラベルの読み取り、または保管箱の単位で登録 |
| 現物の状態(破損、動作、付属品) | 分からない | 組織の実査の基準に従って目で確認 |
| 消耗品と在庫の数量 | 数を数えない | 在庫の棚卸の方法で数量を確認 |
金属キャビネットは、設計の段階で押さえておくべき条件です。鉄板で囲まれた保管庫の中からは電波が外に出にくく、タグの信号が受信機に届かないことがあります。保管のしかたから来る結果なので、キャビネットに置く資産を台帳に記しておき、未検知リストの中で別にまとめて、扉を開ける順で確認します。タグを直接付けにくい品目は、保管箱やケースを一つの資産として登録することもあります。
反論が一つあります。タグを付けられない資産が残るなら、結局は全数の棚卸をしなければならないのではないか、というものです。タグのない資産は、これまでどおり数えれば済みます。変わるのは、人が持って回るリストの長さと順序です。タグが確かめた資産の分だけリストが短くなり、残った行は、探すべきものと見るべきものに、すでに分かれています。
だから、タグを付ける対象は資産の金額より探す時間で選ぶのが理にかなっています。研究所の計測器、病院の移動式の機器、工場の治工具のように、よく移動し、複数の部署で使い回す資産が先です。一か所に据え付けた机にタグを付けても、棚卸の時間はほとんど減りません。
III. 固定資産の棚卸の当日、未検知リストを減らしていく順序
未検知リストの一行には、いくつもの事情が混ざっています。受信機のない場所に保管されている、金属の保管庫の中にある、持ち出しや修理で外に出ている、タグが資産から外れた、本当になくなった、のいずれかかもしれません。順序は、こうした事情を早く見分けられるように組みます。
一つめに、最後に捉えられた時と場所を見ます。Device Managerのタグ一覧には状態と最終受信時刻(Last Seen)が表示され、電池の表示も同じ行にあるので、交換するタグも一緒に拾い出せます。最終受信の日付をTimelineで選ぶと、その日そのタグがどの区域にとどまっていたかが時間の順に出てきます。探すのは、その区域から始めます。
二つめに、社内の記録と突き合わせます。最後に捉えられた場所が出入口の近くなら、持ち出し申請や修理依頼、貸出の記録から見ます。外に出る資産を出入口で記録する構成は、資産の持ち出し管理を扱った記事で別に取り上げました。
三つめに、結果を理由と一緒に書きます。保管庫の中、構外への持ち出し、タグの再取り付け、未発見のようにいくつかに分けておくと、次の棚卸の準備が速くなります。キャビネットから出てきた資産には保管場所の表示を足し、外れたタグは付け直したうえで、資産番号とのひも付けを確認します。
四つめに、最後まで所在不明のまま残った資産は組織の手順どおりに扱い、最後に捉えられた日付と区域を一緒に添えます。原因をたどる出発点です。
IV. 台帳の設置場所と実際の位置が違う資産
二つめの束は、探す必要はなくても整理が必要です。台帳には3階の実験室と書かれているのに、タグは何週間も2階の共用倉庫で捉えられている、といった場合です。
資産を一つずつ見るなら、Timelineを使います。資産のタグを選び、日付を変えながら見ると、どの区域にとどまっていたかが出てきて、Excelでダウンロードすれば区域ごとの滞在時間が整理されます。一日、二日なら使用中の移動である可能性が高く、何週間も同じ場所なら、実質的にはそこが定位置です。
区域の単位でまとめて見るなら、Zone Countingが合っています。設定で資産用のタグのカテゴリを作り、区域ごとにカウントをかけておけば、その区域にある資産タグの数と時間帯ごとの記録が出てきて、CSVで受け取れます。台帳上のその区域の所属数量と並べれば、差の大きい区域から見ていけます。
位置が違う資産は、二つの道で整理されます。実際にそこで使われているなら台帳を直し、あってはいけない場所なら資産を戻します。どちらにするかは、資産を使う部署が決めます。データの役割は、判断すべきリストを、とどまっていた期間と一緒に差し出すところまでです。台帳を直しておけば、次の棚卸の基準となる位置もそろいます。
V. 導入前に決めておくこと
- タグと資産番号のひも付け台帳。 未検知リストがそのまま資産リストになるには、タグの識別番号と資産番号が1対1でつながっている必要があります。タグを別の資産に付け替えるときは、台帳も一緒に直します。
- 区域の名前と台帳の位置の単位。 台帳が階と部屋の単位で位置を書いているなら、区域も同じ単位、同じ名前で描きます。ダウンロードした結果と台帳を突き合わせる時間が、ここで分かれます。
- 保管条件の表示。 金属キャビネットや金庫、受信機を置かない地下倉庫に保管する資産を、あらかじめ記しておきます。受信機の配置を設計するときにこうした空間を伝えていただければ、どこまでをタグで確かめるかを最初から決められます。
- 記録がたまる時間。 ずっと抜けているタグとときどき抜けるタグを分けるには、日付ごとの記録が必要です。タグの取り付けと受信機の設置は、棚卸の直前ではなく、十分に余裕をもって前に終えます。
- 結果を移す様式。 ダウンロードしたExcelを、既存の棚卸表や資産管理システムの棚卸結果のどの欄に移すかを決めておきます。
おわりに
12月のあの印刷物に戻ると、担当者を引き止めていたのはリストの厚さではなく、リストの最後の数行でした。タグが確かめた資産を除けば、固定資産の棚卸はその数行から始まります。人の目は、探すことより、状態と数量を見ることに使われます。
ORBROはBLE受信機のTwinTrackerとタグ、管制ソフトウェアORBRO OSを自社で作っています。登録されたタグと未検知のタグ、区域ごとの履歴と数量を同じORBRO OSの中で見て、結果はExcelとCSVでダウンロードして既存の台帳と突き合わせます。すでに資産に付けて使っているBLEタグがあれば、そのまま使えるかどうかも一緒に確かめます。棚卸の対象となる資産の種類と保管のしかたを整理してお問い合わせいただければ、タグで確かめる資産と人が確かめる資産を分ける設計から、一緒に見ていきます。