災害時オペレーションシステムとは、散らばった防災カメラを一つの画面に集める

2026-09-08

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災害時オペレーションシステムとは、散らばった防災カメラを一つの画面に集める

災害対策本部が立ち上がった庁舎の一室。壁の大型スクリーンにはヘリコプターからの映像が映り、その隣の机では担当者が河川監視カメラの画面をブラウザで開いています。少し離れた席では、飛ばしているドローンの映像を操縦者が手元の端末で見ています。

同じ災害を見ているのに、画面が三つに分かれています。どの映像がどこを写しているのかは、それぞれの画面を見ている人の頭の中にしかありません。

これはカメラが足りないという話ではありません。河川、道路、防犯、消防と、映像を取る仕組みは課ごとにすでに入っています。足りていないのは、それらを一つの画面に並べて、同じ地図の上で見る層です。

そして、その層には名前と定義があります。消防庁の手引きに「災害時オペレーションシステム」という対象事業があり、そこに書かれた一文を読むと、何を備えるべきかがほぼそのまま出てきます。

I. なぜ今なのか

制度と予算が、続けて動きました。

まず法律です。災害対策基本法等の一部を改正する法律(令和7年法律第51号)が2025年6月4日に公布され、同日および同年7月1日に施行されました。令和6年能登半島地震の教訓等を踏まえた改正で、内閣府の概要資料には次のような内容が並んでいます。国は地方公共団体に対する応援組織体制を整備・強化し、要請を待たずに先手で支援すること。支援につなげるための被災者、避難所の状況の把握。被災者支援等に当たってのデジタル技術の活用。広域避難における避難元及び避難先市町村間の情報連携の推進。

「状況の把握」と「デジタル技術の活用」が、条文の背景説明ではなく改正内容の見出しとして並んでいる点が、この改正の性格を示しています。

方針の側も同じ向きです。「防災立国の推進に向けた基本方針」が令和7年12月26日に閣議決定されました。組織面では、防災庁設置法(令和8年法律第61号)が2026年7月17日に公布されています。施行日は、一部を除き令和8年12月31日までの間において政令で定める日とされており、本稿執筆時点で発足日は政令に委ねられています。これは国の組織に関する法律であり、これ自体が自治体に新しい義務を課すものではありません。ただし国側の司令塔が整えば、都道府県・市町村との間でやり取りされる情報は増える方向に向かいます。

予算の側も動きました。総務省の「令和8年度地方財政対策の概要」によると、緊急防災・減災事業費は対象事業を拡充した上で、事業期間が令和12年度まで5年間延長されました(令和8年度から令和12年度)。地方財政措置は地方債充当率100パーセント、交付税措置率70パーセント、事業費は5,000億円とされています。

法律が「状況を把握してデジタルで扱え」と言い、予算の枠が5年延びた。自治体の側から見ると、検討の窓が開いている期間はここです。

II. 手引きが言う「災害時オペレーションシステム」とは

総務省消防庁は「消防防災施設・設備整備に関する財政措置活用の手引き(令和8年度版)」を令和8年5月に公表しています。この手引きの第6章、消防防災情報通信施設の6-9が「災害時オペレーションシステム」です。

対象事業として掲げられているのは次の二つです。

一つめは、災害時オペレーションシステムの新設、機能強化を伴う更新で、施設整備(サーバーの設置等)と一体的に行われるものです。そのシステムは「災害対策本部や消防本部等に設置する、ヘリテレ、ドローン及び地上設置カメラによる画像等をリアルタイムで大型スクリーンに表示し、同時に関係機関間で共有する機能等を有するシステム」と説明されています。二つめは、画像伝送システム(施設分)の新設、更新です。

この一文は、四つの要件に分解できます。

要件 手引きの文言 実務で問われること
置き場所 災害対策本部や消防本部等に設置する 庁舎内のどの部屋に、どの机の配置で置くか
入力 ヘリテレ、ドローン及び地上設置カメラによる画像等 課ごとに散らばった映像源をどう束ねるか
表示 リアルタイムで大型スクリーンに表示 一枚の画面に何をどう並べるか
共有 同時に関係機関間で共有する機能等 誰にどこまで見せるか

財政措置としては、防災対策事業債と、令和12年度までの時限措置である緊急防災・減災事業債が掲げられています。ここは書き方に注意が必要な箇所で、手引きに対象事業として掲げられていることと、個別の事業に充当できることは別です。実際の充当の可否は総務省および都道府県の判断になりますので、企画の段階で担当課と確認する前提で読む必要があります。

隣の6-6「防災情報システム」も見ておくと、役割の線引きがはっきりします。6-6の対象事業には、河川水位情報やドローンからの映像等を関係機関や避難所に送り警報等を呼びかけるシステム、被災者関連機能(被災者台帳管理等)や避難所関連機能・避難行動要支援者関連機能・関係機関等との災害情報等共有機能・職員参集連絡機能等を有するシステム、災害情報伝達手段への一斉送信システム、携帯電話網等を活用した情報伝達システム、そして既存の防災情報システムの改修が挙げられています。改修には新総合防災情報システム(SOBO-WEB)とのデータ連携に必要な都道府県防災情報システムの改修も含まれます。

被災者台帳や一斉送信は6-6の領域です。本稿が扱うのは6-9、つまりカメラとセンサーの映像を地図の上に集めて見せる管制の層に限った話になります。

III. 集めるときに実際に引っかかること

定義は明快ですが、既設のカメラを一つの画面に集める作業は、機器を買えば終わるものではありません。着手してから出てくる論点は、だいたい次の五つです。

1. カメラの持ち主が課ごとに違う

河川監視は土木、防犯は市民安全、施設は管財、消防は消防本部。同じ庁舎の中でも、アカウントも保守業者も別です。技術の前に、どの課がどの映像を出せるかの合意が要ります。

2. 回線がばらばら

庁内LANに載っているもの、専用線のもの、現地でLTEを使っているもの。帯域と遅延が違えば、一枚の画面に並べたときの見え方も揃いません。どの映像を常時流し、どれを必要時だけ引くのかを決める作業が入ります。

3. 大型スクリーンは一枚しかない

映像源が増えるほど、一枚あたりの表示は小さくなります。全部映すことが目的ではなく、いま見るべきものを前に出すことが目的です。何を出すかを決める人と、その切り替えの操作をする人を先に決めておかないと、本部が立ち上がった当日に誰も触れなくなります。

4. 既存システムとの関係

すでに防災情報システムが入っている団体では、新設ではなく改修という選択肢もあります。手引きの6-6には既存の防災情報システムの改修(機能強化)が対象事業として挙げられています。新しい層を足すのか、既存の層を広げるのかは、現行システムの構造次第です。

5. 映像に座標がついていない

地図の上に映像を並べるには、そのカメラがどこにあり、どちらを向いているかの情報が要ります。設置台帳が更新されていない、あるいは紙のままという状況は珍しくありません。統合作業の実務時間の多くは、ここに使われます。

IV. 庁舎の中にサーバーを置く

手引きの定義には、施設整備(サーバーの設置等)と一体的に行われるものという条件が入っています。つまり庁舎内に処理の基盤を置く前提が、事業の定義の側にあります。

自治体の防災映像は、住民が写り、通報の内容と結びつき、庁舎内の限られた職員だけが見るものです。外部に出さない構成であることが、調達要件として先に来る場面は多くあります。

ORBROが自治体向けに構成している都市災害統合監視は、この前提の上に組み立てられています。

まず、既設のカメラをそのまま使います。カメラを入れ替えるのではなく、いま各課が持っている映像を取り込む側に立ちます。映像の解析は現場側のORBRO Edge Proで行い、映像そのものを外に出さずに、必要な事象だけを庁舎内のサーバーへ渡します。地図の上に映像源を並べ、区域ごとのルールと発生した事象の履歴を扱うのがORBRO OSです。映像から事象を起こす部分はAI Event Managerが担当します。映像を事象の単位で扱う考え方は「検知のあとに何が起きるか」で詳しく書いています。

韓国のある自治体では、課ごとに別々に運用されていたカメラと各種の通報情報を一つの地図の上にまとめる災害統合管理システムをORBROが納入し、運用開始後も継続して機能を追加しています。設置の作業そのものより、どの映像を誰が見られるようにするかを決める工程に時間がかかったのが、この案件から得た実感です。日本の自治体でも、部署をまたぐ点は同じ構図になります。

V. 導入時の検討ポイント

1. 一つの画面に何を出すかを先に決める

機器の構成より前に、本部が立ち上がった最初の30分に見たい画面を決めます。そこから逆算すると、必要な映像源とレイアウトが決まります。

2. 既存カメラの棚卸しから始める

型番、設置位置、向き、回線、録画の保存期間、そして所管課。この一覧が揃った時点で、統合にかかる工数の見当がつきます。新設が必要なカメラは、この後に決まります。

3. サーバーの置き場所を建物の条件から詰める

電源、空調、耐震、そして誰が入れる部屋か。手引きの定義が施設整備と一体的なものを対象としている以上、置き場所の話は設計の後半ではなく最初に出しておく項目です。

4. 権限設計を課の構成に合わせる

誰がどのカメラを見られるか、誰が操作できるか、関係機関にどこまで出すか。組織図をそのまま権限の表に落とせる形にしておくと、人事異動のたびの手直しが軽くなります。

5. 手引きと要綱を担当課と一緒に読む

対象事業の区分、留意事項、そして地方債同意等基準運用要綱。財政措置の話は企画の担当課だけで進めず、財政担当と一緒に原文を確認しながら進める方が、後戻りが少なくて済みます。

VI. おわりに

カメラを増やす予算より、すでにあるカメラを一つの画面に集める予算の方が、説明の材料が揃っています。事業の名前も定義も、手引きに書かれているとおりです。

そして定義文をもう一度読むと、そこに書かれているのは機器の一覧ではありません。災害対策本部に置き、リアルタイムで大型スクリーンに映し、同時に関係機関と共有する。全部、使われ方の話です。何を買うかではなく、どう使うかが先に書かれている事業だということです。

ORBROは、カメラとエッジ機器と管制ソフトウェアを自社で開発しています。そのため、映像をどこで解析し、どのデータを庁舎の外に出さず、地図の上に何をどう並べるかを、別々の製品を継ぎ足すのではなく一つの構成として設計できます。既設カメラの構成や庁舎の条件によって必要な形は変わりますので、検討の初期段階からお気軽にお問い合わせください。