物流効率化法の荷待ち時間、何で測り何を記録に残すか

2026-09-07

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物流効率化法の荷待ち時間、何で測り何を記録に残すか

早朝の物流倉庫。バースのシャッターが上がる前から、構内にはトラックが並んでいます。ドライバーは受付窓口で紙の受付簿に到着時刻を書き、車に戻って順番を待ちます。この紙に書かれた時刻が、翌年度に国へ提出する定期報告書の元データになります。

2026年4月1日、物流効率化法が全面施行されました。2025年4月の施行で全ての荷主・物流事業者に物流効率化の努力義務が課され、さらに全面施行によって、一定規模以上の事業者、いわゆる特定事業者に中長期計画の作成と定期的な報告等が義務付けられました。

定期報告書に書く内容は決まっています。判断基準の遵守状況、その他に実施した措置、そして「荷待ち時間・荷役等時間の計測結果その他の改善状況や課題の整理」です。時間が、報告の項目になりました。

では、その時間は何で測るのでしょうか。国が示した計測手段は三つあります。そのうち二つは、荷主が自社の構内で自ら時刻を残す手段ではありません。

I. 何が義務になったのか

先に整理しておきたいことがあります。特定事業者に課されたのは、荷待ち時間を短縮すること自体ではなく、計画を出し、報告を出し、責任者を置くという手続です。

特定事業者の指定基準は、施行令に定められています。第一種荷主・第二種荷主・連鎖化事業者は年度の取扱貨物の重量が9万トン以上、倉庫業者は年度の貨物の保管量が70万トン以上、貨物自動車運送事業者等は保有車両台数が150台以上です。物流効率化法ポータルサイトでは、令和8年8月27日時点の特定事業者の一覧が四つの区分に分けて公表されています。

指定を受けた事業者が行う手続は、指定に係る届出、物流統括管理者(CLO)の選任・届出、中長期計画書の提出、定期報告書の提出の四つです。

期限には注意が必要です。中長期計画書は指定を受けた年度の7月末までが原則ですが、2026年度に限り10月末まで延長されています。物流統括管理者の選任・届出は指定後すみやかに、遅くとも中長期計画の提出までが目安とされています。定期報告書は指定を受けた年度の翌年度から、毎年度7月末までです。

罰則も手続に対応しています。中長期計画を提出しない場合、定期報告を行わない場合や虚偽の届出をした場合は50万円以下の罰金(法第76条)、物流統括管理者を選任しない場合は100万円以下の罰金(法第75条第2号)、選任・解任の届出を行わない場合は20万円以下の過料(法第80条)と定められています。また、措置の実施状況が判断基準に照らして著しく不十分である場合には勧告が行われることがあり、勧告に従わない場合はその旨が公表されることがあります(法第49条)。

一方で、よく話題になる「2時間」という数字は、罰則のついた基準ではありません。基本方針(令和7年農林水産省・経済産業省・国土交通省告示第1号)は、1運行当たりの荷待ち時間等が全国平均で合計2時間以内となるよう削減する必要があるとし、荷主等は1回の受渡しごとの目標時間を原則1時間以内と設定しつつ、業界特性その他の事情によりやむを得ない場合を除き2時間を超えないよう短縮するものとする、と目標を示しています。令和10年度までに運転者一人当たりの荷待ち時間等を年間125時間短縮するという全体目標の内訳にあたる数字です。

つまり、義務の中心は計画と報告と体制の側にあります。ここを取り違えると、対応の順番も取り違えます。

II. 報告書に書く数字はどこから来るのか

定期報告書の様式は、施設ごとに1回の受渡しあたりの平均荷待ち時間・荷役等時間を、4月から翌年3月までの月ごとに分単位で書く形になっています。平均値は、計測期間内の総荷待ち時間等を総受渡し回数で割って求めます。

全ての施設・全ての運行を測る必要はありません。経済産業省の手引書はサンプリングを許容しており、区分ごとに年度の取扱貨物重量の半分程度以上を把握できるよう施設を選ぶこと、期間は四半期ごとに任意の連続した5営業日以上を選定することが示されています。寄託契約を締結した倉庫業者が管理する施設は、計測対象から除くことができます。

ここで一つ、測り方が報告の書き方を決めてしまう箇所があります。荷待ち時間と荷役等時間は分けて記載するのが望ましいとされていますが、入退場管理簿から集計するために入場から退場までの合計時間しか分からない場合など、両者を分けられない場合は、無理に区別せず「荷待ち時間等」の欄にまとめて記載して構わないとされています。その場合、荷待ち時間の欄と荷役等時間の欄はハイフンになります。

分けられるかどうかは、現場の努力ではなく計測の設計で決まります。到着した時刻と荷役等を開始した時刻の両方が残っていれば分けられますし、入場と退場しか残っていなければ分けられません。

なお、1回の受渡しに係る荷待ち時間等が1時間未満であれば報告を省略できますが、省略できるかを判断するにも現状の時間を把握している必要があります。

III. 受付簿とデジタルタコグラフの隙間

荷主の判断基準の解説書は、計測についてこう書いています。「荷待ち時間等の計測は、受付簿等からの集計や計測員の配置によることも可能ですが、デジタル技術を活用し効率的に行うことが望ましいです」。

具体的な方法として挙げられているのは、トラック予約受付システムによる記録から集計する方法と、トラック事業者が記録するデジタルタコグラフ情報について直接またはデータ連携プラットフォーム等を経由して提供を受け、集計する方法です。経済産業省の手引書はこれに加えて、データの取得が難しい場合として、入退場管理簿からの集計や現場担当者・ドライバーからの聞き取りによっておおよその平均時間を把握する方法も示しています。

この三つを並べると、それぞれの性格が見えてきます。

トラック予約受付システムは、到着時刻・出発時刻を自動的に記録する仕組みです。ただし記録されるのは、そのシステムに乗った運行に限られます。手引書自身、システム仕様や契約形態等の都合上、一部の運行で計測が難しい場合に触れています。

デジタルタコグラフは車載機器の記録です。休憩時間の除外等を正確に行うには有効だと解説書も述べています。ただしこれは自社の設備ではなく、トラック事業者の設備であり、データの提供を受ける必要があります。解説書は、トラック事業者側でも情報提供に協力するよう促されていることを紹介し、必要に応じて協力を求めるよう書いています。裏返せば、提供を受けるまでは荷主の手元にありません。

聞き取りと入退場管理簿は、人が書く点と人の記憶です。手引書が挙げている記録の例は「平均30分前後待機」「混雑時は1時間超」といった粒度です。

三つとも制度上認められた方法です。ただし共通しているのは、荷主が自社の構内に、自社の設備で、車両ごとの時刻を残す手段がここに挙がっていないという点です。予約システムは約束の時刻を扱い、デジタルタコグラフは他社の記録で、聞き取りは平均の印象です。実際に何時何分に門を入り、何時何分に荷役が始まったか。その一次記録の置き場所が空いています。

IV. 構内で時刻を残す

先に線を引いておきます。荷待ち時間そのものを自動で算出することは、システムの仕事ではありません。荷待ち時間の起算点は場合分けされていて、指示された時刻・時間帯より早く到着した場合は指示時刻等から、指示時刻等に到着した場合と遅く到着した場合は到着時刻から数えます。さらに「荷主等の都合により待機した時間に限る」という限定があり、ドライバーの到着の遅れに起因して生じた追加的な待機や、天候・交通事情等により荷主等の責任によらず生じた待機は除外できるとされています。この判断は人が行うものです。

システムが担えるのは、その判断の材料になる時刻を、抜けなく残すことです。

ORBROが物流施設向けに構成しているドック管理は、この一次記録を作る側に立っています。車両の入場、ヤードでの待機、バースへの着車、荷役開始、出場という節目の時刻を記録し、車両ごとの一連の流れとして残します。既設のカメラを使い、タグを付けずに車両を捉える映像AIの構成にも対応しているため、協力会社の車両に機器を配る前提を置かずに始められます。記録はORBRO OSに集約され、ヤードやバースを区域として定義して、その区域への進入と退出を履歴として蓄積します。区域を単位に運用を組み立てる考え方は「区域を描いた瞬間に管制が始まる」で詳しく扱っています。

映像からイベントを起こす部分はAI Event Managerが担当し、物流センターの作業者動線分析とも同じ土台の上にあります。

四つの記録源を並べると、性格の違いがはっきりします。

記録源 誰の設備か 残る時刻 荷待ちと荷役等を分けられるか
受付簿・入退場管理簿 荷主 受付、入場と退場 入退場のみの場合は難しい
トラック予約受付システム 荷主 予約枠、到着と出発 システムに乗った運行の範囲で可能
デジタルタコグラフ トラック事業者 運行データ全般 提供を受けたうえで可能
構内の時刻記録 荷主 入場、着車、荷役開始、出場 荷役開始の時刻が残るため可能

構内の時刻記録は、他の三つを置き換えるものではありません。デジタルタコグラフや業務記録はトラック事業者側の制度に属するもので、荷主の設備がその代わりになることはありません。構内の記録が埋めるのは、自社の敷地の中で何が起きたかを自社で説明できるようにする部分です。

V. 導入時の検討ポイント

1. 報告する施設を先に決める

サンプリングの母数から逆算すると、測るべき施設はおのずと絞られます。取扱貨物重量の上位から積み上げるだけでなく、滞留や苦情が多い拠点を優先して選ぶことも認められています。全拠点に一斉に入れるより、報告対象になる拠点から始める方が費用も工期も読めます。

2. 時刻の定義を先に合わせる

「到着」をどこにするかで数字は変わります。門を入った時点か、受付を済ませた時点か、バースに着けた時点か。制度上の起算点の場合分けを踏まえ、どの地点を何と呼ぶかを決めてから設置場所を決めます。順序が逆になると、撮ってはいるが使えない記録が残ります。

3. 荷役開始の時刻が取れる位置に線を引く

荷待ち時間と荷役等時間を分けて把握したいなら、荷役開始が判別できる場所に区域の境界を置く必要があります。入場と出場だけを見ている限り、報告書の欄はまとめ書きのままです。

4. 既存の予約システムがあるなら重ねる

予約システムは約束の時刻を持ち、構内記録は実際の時刻を持ちます。両方あれば、指示時刻等より早く着いた運行と遅く着いた運行を分けて見られます。どちらかを捨てる話ではありません。

5. 構内網とデータの置き場所

映像や車両の記録を外部に出さない前提で設計を求められる施設は少なくありません。解析を現場側のORBRO Edge Proで行い、サーバーを構内に置く構成であれば、この条件のまま運用できます。閉域での運用は「エッジ・オンプレミス管制」にまとめています。

VI. おわりに

制度は、時間を報告の項目にしました。同時に、その時間を何で測るかについては「望ましい」という言葉で書いています。計測の方法は各社に委ねられているということです。

委ねられている以上、そこは各社の設計です。翌年度の7月末に出す数字は、その年度の運行から積み上がります。今どの時刻が残っていて、どの時刻が残っていないのか。それを確かめる作業は、報告書を書き始めてからでは間に合いません。

もう一つ、時間を正確に把握しておく理由があります。解説書は、荷主が待機時間料や積込み料、取卸し料等を確認し、適切な支払いや取引先への請求を行うためにも、荷待ち時間等の正確な把握が望まれると述べています。報告のためだけの数字ではありません。

ORBROは、カメラとエッジ機器と管制ソフトウェアを自社で開発しています。そのため、どこで時刻を取り、どの区域を境界とし、履歴をどれだけ残すかを、別々の製品を継ぎ足すのではなく一つの構成として設計できます。拠点の構造や既設カメラ、予約システムの有無によって必要な構成は変わります。検討段階からお気軽にお問い合わせください。